第2回 卒業論文レジュメ(2002/5/20)
「家の中のバリアフリー」 国際学部国際社会学科4年 佐藤美佐子
まちの中、公共施設、交通機関などがバリアフリーであれば、だれもが制限なく移動でき、社会参加も進むだろう。しかし、もっとも身近なところがそうでなければ何も始まらないのではないだろうか。もっとも身近なところといえば、「家」である。家事などの活動をする場であり、家族が集い憩う場であり、学校や会社等へ出かけていく基点でもある。我が家が「我が家」である限り、思うように活動できなければ何もならない。しかし、年をとり、身体機能等が衰えていくことによって、家の中でもさまざまな困難が生じるようになる。階段がのぼりにくくなる、敷居などの段差につまずくなどをはじめとして、トイレや風呂を含む家の中のあらゆる場で日常生活動作に困難を感じるようになるのである。年をとって体が動かなくなるのだから仕方がない。そう言ってしまえばそれまでであるが、それでは動くことが少なくなり、老化を進めていくことにつながってしまう。動く努力をしなければさらに衰えていくということもあるだろうが、年をとっても自分の意思で自分のできることをしていくということが大切であると、私は考える。機能が低下していくことを予防することも必要であるが、機能が低下しても日常生活を妨げることのない環境を整えておくことが必要である。よって、家庭においてもバリアフリーが必要なのである。ということで、今回はバリアフリーを「家」という視点で考えみることにした。
「バリアフリー」という視点での家づくり
生活の基点である家の中にバリアがあっては、身体機能の低下した高齢者などが自立した生活を送るのは難しくなる
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バリアフリーの家がひとつの手助けとなる
バリアフリーの家=高齢者だけでなく、だれにとっても暮らしやすい家
・日本の伝統的な家にはバリアが多い
階段、段差(敷居など)、廊下の幅、玄関の上がりがまち、風呂、トイレなど
バリアフリーと伝統の問題
・家を買う・建てるときに受ける融資
住宅金融公庫から融資を受けることができる
基準金利で融資を受けるためには、「バリアフリータイプ」か「省エネルギータイプ」であるという基準をクリアしなければならない
→バリアフリーがポイントとなっている
住宅改修
手すりの取り付け、スロープの取り付けによる段差の解消などを行うことで、身体機能の低下などに合わせて家の中を改修していき、自立した生活ができるようにする
**住宅改修と介護保険制度との関係**
介護のための住宅改修→居宅介護住宅改修費
(20万円までは利用者の自己負担は1割で済む)
・住宅改修に関わるトラブル
適切な改修がされない(自分にあった改修になっていない)
悪質な業者が立場の弱い高齢者を狙って高額な改修費を請求する など
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補助はあっても、
改修を行う業者の認定
改修後のチェック体制
問題が発生したときの保証
がないというのが現状
その他の問題として、
医療・福祉・建築に関する知識を併せ持った人材の不足
各分野における連携体制が整っていない
住宅改修そのもの(バリアフリーを行うにあたって)・住宅改修を行う業者に関する情報の不足 など
→こういった問題・課題の解決が必要
サービスの提供は民間に任せても、チェックを行う必要がある。こういうところで行政が関わっていくべきではないか。
行政がどう関わっていくかということが課題
*介護保険制度に関して
介護保険制度は、3年ごとに財政を見直すことになっている
2000年4月に施行されたわけだが、現状を見ると、サービスの質や介護報酬についての問題、財政面の問題などのさまざまな課題があり、改善していかなければならないことが多い。今後さらに高齢化が進んでいくというのに、社会全体で高齢者介護を支えていくことを目的としているこの制度が問題ばかり抱えていては将来が不安。